吃音の僕が五大商社に内定するまで|思っているほど吃音は悪くない

今回は普段と異なり、自分の体験について語ろうと思う。世の中には、就活を始めたものの吃音症で面接に苦手意識を持ってしまい、既に将来を不安に思っている当時の僕のような学生は多いのではないだろうか。そんな学生に、先輩として「大丈夫だよ」と伝えるためにこの記事を書いた。
僕は難発性の吃音を患っている。しかも、就活中は面接での度重なる失敗から話すことに苦手意識を覚えてしまい、人生一症状が強くなった。しかし、これでもかとどもりまくった第一志望の最終面接。そこにいた役員の方たちは笑顔で僕を迎え入れてくれた。
約1年にわたる吃音との戦い、そしてそこからわかった「吃音は思っているより悪くない」ということをお伝えできればと思う。
吃音とは
吃音(きつおん)とは、話すときに言葉がなめらかに出ず、途中で詰まってしまう発話障害のこと。
主な症状
- 連発(れんぱつ):最初の音を繰り返す(例:「ぼ、ぼ、ぼく」)
- 伸発(しんぱつ):最初の音を引き伸ばす(例:「ぼーーーく」)
- 難発(なん発):声が出にくく、言葉が最初に出ない(例:「……ぼく」)
幼い頃からの吃音

僕の背景はいらない!という方は【就活中の吃音との向き合い方(やってよかったこと)】で読み飛ばしてほしい。ただ、皆さんと同じれっきとした吃音持ちだということを理解してもらえればと思う。
吃音が発症した幼少期
私が吃音を発症したのは幼稚園高学年頃。「今日楽しかったこと」を母に伝えるときに「あのね、あのね、きょ、きょうね、○〇くんが……ゆうぐで~」とどもった瞬間、私の地獄は始まった。
トラウマと自信の小学校時代
だんだんと心身が成長していき、思春期と呼ばれる時期に入った頃。学校の先生に指名され、自分のアイデアを発表しようとした。が、どれだけ頑張っても1分間なにも言葉が出てこない。1分なんて、と思う方もいるかもしれないが、当時の自分にとってはあまりに長く辛い時間だった。それまでも吃音は自覚していたが、この一件でついに自身を完全喪失してしまった。
以降人前で話す役職を避け続け、気づけば自身の予餞会(卒業式の前に開かれる比較的カジュアルな餞の会)の時期に。そこで何年も役職から逃げ続けてきた自分に「予餞会で壇上にて在校生からプレゼントをもらう」役が半ば強制的に与えられてしまった。
しかも「なんかやれよ」という担任の無茶ぶりつき。
そうして迎えた当日。何を思ったかステージ上で大声で叫ぶという暴挙に出る。しかしこれが自信につながり、中学・高校を腐らずに楽しむことができた。
再び自信をなくした就活時代
そして大学3年の夏。面接や選考、OB訪問など、慣れない人と会話をしなければいけない場面で、また吃音で思い悩むことに。しかも第一志望だった商社の選考時期である6月に近づくにつれ、納得内定のない焦りから過度の緊張を抱いてしまい、どもりが強くなってしまった。それでもなるべく「ありのままの自分を知ってもらおう」という気持ちであえて吃音を話のネタにしたり、どもっても笑顔で話し続けたりした結果、商社の中でも第一志望だった企業から内定をもらうことができた。
就活中の吃音との向き合い方(やってよかったこと)

長い就職活動を通じて、僕が感じた「やってよかったこと」は以下の3つ。
- 自己分析で吃音にまつわるエピソードも思い出すこと
- 吃音が人生のターニングポイントだった場合、ES・面接中で隠さず話すこと
- 「吃音が理由で採用してもらえない会社では入れてもうまくいかないだろう」と割り切ること(マインドセット)
一つずつ見ていこう。
1.自己分析で吃音にまつわるエピソードも思い出すこと
吃音の人がやってしまいがちなのが「吃音の記憶に蓋をすること」。僕も最初自己分析をしていたときは常に別のエピソードを用意していた。
しかし、今の性格である負けず嫌いな性格も何事からも逃げない性格も、やはり原点には『吃音に本気で悩み、必死に乗り越えてきた経験』があった。それを包み隠さず話し始めてから、心なしか面接官も本気で僕と向き合ってくれるようになったし、長所・強みにも”厚み”が生まれたように感じる。
2.吃音が人生のターニングポイントだった場合、ES・面接中で隠さず話すこと
吃音を面接で話す大きなメリットがある。それは、面接官をこちらのペースに引き込めることだ。
吃音の話をすると、大体の面接官が優しい顔で話を聞いてくれるようになる。その隙に、
- 吃音がどうターニングポイントだったか
- 吃音に悩んだ末、どう乗り越えたか
- 今は前向きにいろんなことにチャレンジできていること
を話していた。すると、すんなりと話を理解してもらえるし、ナイーブな話だと思ってあまり突っ込んでこない。
吃音は患っている人が少ないからこそ、これまで戦ってきた勲章になる。一種の属性だと思って存分に利用したらよいのだ。
3.「吃音が理由で採用してもらえない会社では入れてもうまくいかないだろう」と割り切ること(マインドセット)
僕も吃音をESや面接で話すときはそれなりに勇気が必要だった。なぜなら、吃音を打ち明けることによって不採用になる可能性が高まると思ったから。まして納得内定がない大学4年の4月。それなりに追い込まれての決断だった。
しかし、五大商社の内定を取った今だからわかるが、どんなに人気な企業でもどんなに入るのが難しい企業でも、吃音が理由で落とされることは絶対にない。実際、商社以外に内定をもらったメガバンクやコンサルでも面接中はどもりまくった。
まともな企業であれば、吃音かどうかではなくあなたが吃音とどう向き合い、何に挑戦してきたかを見てくれる。逆に「吃音だけが理由で採用してもらえない会社では、仮には入れてもうまくいかない」と割り切るのが大事だ。
最後に筆者からメッセージ
吃音の苦しみはなった人しか分からない。だからこそ、吃音で苦しんだ経験は間違いなくその人だけのものだし、戦ってきた勲章だ。就活中はよく「ガクチカ」という言葉を耳にするが、吃音で悩んだ経験こそ本質的な「ガクチカ」ではないだろうか。
気づけば与えられていた吃音。そこに何を感じ、「思うように話せない」という状況にどうアプローチし、乗り越えようとしたのか(乗り越えたのか)。別に自信を持てなくてもいい。でも、必死に向き合ってきた自分だけはどうか大切にしてあげてほしい。
これを読んだからといって急に吃音に対してプラスなイメージを持ち、面接でも何食わぬ顔で吃音に関するエピソードを披露してもらえるとは思っていない。ただ、少しでも「吃音、意外と大丈夫かも」とか、「吃音、利用できるかも」と思ってもらえればと幸いだ。
あなたなら大丈夫。あなたの就活がうまくいくことを強く願っている。



